治療方針

澤歯科医院も開業してから35年が過ぎました。
院長自身も65歳になり、様々な患者さんと向き合ってまいりました。
今までの歯科医師としての経験を踏まえ、治療方針について改めて記載いたします。

できるだけ保険診療で治療し、患者さんの希望がなければ自費治療はお勧めいたしません。

保険診療の内容は決して悪いものではありません。バブル時期以前は、自費治療が結構ありましたが、診療改定により、今では小臼歯(前から4・5番目の歯)まで白い歯を入れることが出来ます。金属の入れ歯や、せともの(セラミック)の歯、インプラントなどは自費になりますが、確かに保険の歯とは違います。良い物は、技術を伴った歯科医にかかれば絶対的に良い物です。患者さんと相談し、希望に叶った治療をしましょう。保綴物と違い、歯周病治療やホワイトニングなどでの自費治療は疑問符がつきます。歯周組織の再生目的での治療は、一時的な効果があっても骨を再生することが出来るのは極わずかです。完璧な歯磨きが出来ていなければすぐ元に戻ります。ホワイトニングも永久に持つものではなく、持続的に処置を続けなければなりません。いわゆるエステと同じです。定期健診で、クリーニングしてもらいメインテナンスするだけで普通は十分だと思います。

一時しのぎの治療はいたしません。痛い歯は即日治すようにしています。

急患で来る患者さんは、痛いから・困っているから急に来るのですよね。時には何で来たのと思う方もいますが。他院では、一時しのぎで、ちょっと詰めて投薬する扱いも多いようです。痛いという苦痛から逃れるため、私は即日対応してあげたいと思っていますが、すぐ治せるものと時間がかかる疾患があります。むし歯で神経が悪くなっている場合、歯肉に膿がたまっている場合などは、予約の患者さんには迷惑がかかり、治療時間が長くなりますが治せます。麻酔をして神経を取る、膿を掻爬することで即日楽になるはずです。しかし、歯周病の急性発作で歯が浮いた状態のものは、咬み合わせの調整と服薬で徐々に炎症が治まるのを待つしかありません。抜いてしまえばそれまでですが、炎症が治まれば使えそうな歯を抜くのは忍びないです。親知らずの痛みも、上顎のように抜ける歯であれば抜きますが、下顎で横を向いている歯などは即日の抜歯は無理です。すぐに治せないことがあることも理解して下さい。前歯がとれた場合なども、1本などであれば仮歯は作れますが、放っておいて数本が脱落した場合はいきなり仮歯を作ってと言われても出来ません。なるべく限界まで放置せず早めに受診して下さい。

残せる歯は出来るだけ残して治療します(危ない歯は抜くことをお勧めする場合もございます)。

歯周病で動揺した歯は、痛むようなら抜くしかありません。痛みのない歯は、患者さんが抜くことを拒めば、出来るだけ残します。入れ歯を作製するには、以前であれば危ない歯は全て抜いて、それから型どりするのが当たり前で、今でもそのようにするケースがほとんどです。でも、入れ歯の設計をする際に、危ない歯が抜けても入れ歯に歯を足してそのまま使えるように考えておけば、動揺した歯でも残しておくことが出来ます。患者さんが諦めが付くまで無理に抜歯することはしません。
歯根が割れたり、むし歯が歯肉のかなり深いところまで進んだ歯は、以前であればほぼ抜かれる運命にありました。ただ、脱離したり割れる前まで、何事もなく使えていた歯をいきなり抜くと言われても患者さん自身としては納得出来ないこともあります。神経の管の処置や、被さった歯肉を電気メスで切り取る、精密な型どりをする、最新の接着力の良いセメントで合着するなど極限の努力をして残すように努めます。それでも一生持つ保障はなく、状態が悪ければ1年足らずで再度脱落するかもしれません。その際には諦めて頂けますよね。
また、一つの考え方として終活の問題があります。この頃、高齢者の方の受診が特に増えています。通院出来るうちは、危ない歯を残しておいても、いつでも対応出来ますが、体調が落ちた時、そんな時にこそ痛みや腫れが出るものです。また、服薬の影響もあります。出来れば、通院出来るお元気なうちに危ない歯は抜いてしまって、終活に備える考え方もあります。体力の問題だけでなく、認知の面でも、この超高齢化社会では考えなければならない問題です。8020達成者が60%に達した現況を喜んでばかりいられない状況があります。

神経の治療はできるだけ短時間で完了するよう心掛けております。

他院から治療が長すぎると言って転院される患者さんが多くいます。歯の中の神経の治療は確かに時間がかかります。根の先に膿がたまったケースや、治療がしにくい奥歯の神経の管を完全に掃除消毒するのは大変な苦労です。ただし、回数を多くしたからといってそれが完全な治療に結びつく訳ではありません。私は器具の使い方や、歯の削り方の工夫で、なるべく早く消毒を済ませるよう努めています。はっきり言って、治る歯は治るし、時間をかけても治らない歯は治りません。回数が多くなれば、それだけ感染する機会が増えるだけだし、患者さんが通院される苦労を考えると、早く現状回復出来るように努めています。口を開いている時間が長くなるのは我慢して下さい。

最新のレントゲンを活用しております。

診断には、レントゲン撮影が必須ですが、放射線被曝を気にされる患者さんもいます。新調した機械は最新型で被曝量は最少です。元々歯科診療での放射線量は非常に少なく、年間自然界からの被爆量の1/100、医科用CTなどの1/700程度です。視診だけでは判断出来ない場合、現在の機械は非常に鮮明で、画像処理も出来るため、的確な診断が出来ます。レントゲン診断を活用することをご理解お願いいたします。


徒然なるままにお話ししましたが、私が常々考えていることを説明しました。
患者さん方のご理解ご協力をお願い申し上げます。